先週、11月12日に公開初日を迎えた「この世界の片隅に」
【テアトル新宿】「この世界の片隅に」は2016年アニメ映画の最高傑作である
大ヒット中の「君の名は。」に比べればちょっと地味な雰囲気やけど、じんわり染み渡るようないい映画です。
この映画にはこうの史代原作の知る人ぞ知る漫画がありまして。
全3巻で短いし、映画を見たその勢いで買ってしまいました。
映画と漫画の違い
基本的な物語や構成はほとんど変わりません。
漫画は日常の様子を切り取った短編集なんですが、映画では順番はほぼそのままでつながりを綺麗に整えて、まとめ直した感じです。
1番の違いは主人公すずと白木リンとエピソード。
映画ではすずが迷子になった時出会っただけで、それ以上の交流はほとんどないのですが、漫画ではガッツリ友達になってます。
しかもすずの旦那である周作とも因縁があったりして。
映画本編では描かれなかったものの、設定としては残ってるみたい。
その証拠に、すずが唇に口紅を引いて周作を見送るシーン。
あのすずにしては似合わんもん持ってるなーと思ってたんですが、原作にはちゃんと口紅をもらうエピソードがあります。
他にもスタッフロールの最後でクラウドファンディングに参加された方の名前が紹介されているところで流れている、イメージ映像みたいなやつ。
あれも、原作ではちゃんと1話分として描かれています。
日常の事実の積み重ねがリアリティを生む
わたしは死んだ事がないので、死が最悪の不幸であるのかどうかわかりません。他者になった事もないから、すべての命の尊さだの素晴らしさだのにも、厳密にはわからないままかも知れません。
そのせいか、時に「誰もかれも」の「死」の数で悲劇の重さを量らねばならぬ「戦災もの」を、どうもうまく理解出来ていない気がします。
そこで、この作品では、戦時の生活がだらだら続く様子を描く事にしました。そしてまず、そこにだって幾つも転がっていた筈の「誰か」の「生」の悲しみやあきらめを知ろうとしました。
引用:「この世界の片隅に」あとがきより
あとがきにも書かれているように、この物語は終始、どこにでもいる普通の人の日常を描いています。
庶民から見た戦争。
そのリアリティは作者自身が集めた膨大な資料や証言に支えられています。
その中から浮かび上がってきた日常の喜怒哀楽。
時代は違っても身近な出来事だからこそ、共感できる。
漫画の枠外ではお話の中で描ききれなかった補足情報も書かれていて、戦争のことをあまり知らなくても、なぜ戦時中に生きた人の考えや行動を理解する助けてくれます。
派手さはないけど、圧倒的に伝わってくるものがあるのは、こういった生きた資料を元に描かれているからなんすねー。
映画と漫画、両方合わせて見るのがオススメ
映画では語られていなかった部分を漫画で知ることで、より物語を深く理解できました。
もちろん、映画の方が音楽もあるし、絵も動くし、セリフもしゃべっているので強烈に伝わるものがあります。
でも、時間が限られているため、どうしても省略しなくてはならないシーンも出てきてしまいます。
ひとつの物語としてはなくても成立はするものの、やっぱりあった方が物語に幅が出るし、登場人物の気持ちも理解しやすいな、と。
まあとりあえず映画見て。
もっと色々知りたいなと思ったら漫画読んで。
それから、また映画見るってパターンが最強ちゃうかな。